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家族信託の活用事例②~親なき後問題~
2018年9月26日
家族信託の活用事例②~親なき後問題~
障がいを持つ子どもを抱える家庭にとっては、その子の面倒を全面的にみている両親が将来その子を支えれなくなってしまったら、その子の財産管理や身上監護は誰がどのように担ってくれるのか?という不安や心配が最も切実な問題ではないでしょうか。
これを「親なき後問題」といいます。
「親なき後」と言っても、親が亡くなった後だけでなく、認知症や病気で障がいを持つ子どもの面倒がみれなくなった場合にも該当します。これまでは、成年後見制度を利用し、信頼できる専門家等に後見人になってもらうなどの手段がありましたが、そのような付き合いの専門家がいない家庭の方が多いと思います。
そこで今回は「家族信託」を活用して、信頼できる家族に障がいのある子の支えになってもらう事例を紹介します。
事例3:親なき後の障がいがある子どもの財産管理
次女からの相談。父は数年前に他界しており、母には、長女と次女がいます。長女には障害があり、身体が不自由です。長女には配偶者や子供はいません。今まで母と長女が同居しており、母が長女の面倒を看ていました。しかし、最近母の物忘れが増えており、今後の母自身のことや長女の生活が心配です。母は自分の財産は長女の生活を配慮しつつも、子ども2人には平等に相続させたいと考えているそうです。
●何もしなかった場合
母の年齢と現在の状態を鑑みると、数年後には認知症など、意思判断能力が失われる状態になってしまう可能性があります。その場合には母名義の不動産の管理や処分、預貯金の引き出しなどができなくなり、また、長女の生活を見守ることができなくなるなどのリスクがあります。
●家族信託を使った場合
自宅とアパート、金融資産を今後は次女が管理できるように信託契約を結びます。
信託スキーム設計1
委託者 母
受託者 次女
受益者 母
第二受益者 長女及び次女
信託財産 自宅、アパート、現金(自宅及びアパートの管理費用・敷金)
信託終了事由 母及び長女の死亡
帰属権利者 次女
信託スキーム設計2
委託者 母
受託者 次女
受益者 母
第二受益者 長女
信託財産 現金(母と長女の生活資金)
信託終了事由 母及び長女の死亡
帰属権利者 次女
母が将来施設に入居する可能性があるため、その後は長女の生活の管理を次女がみていく必要があることから、母の財産を次女が受託者として管理し、母他界後は託された財産を次女が長女のために管理を継続する、長女亡き後は次女にその財産が帰属するという内容の家族信託を設計します。
今回は、母と長女の「生活資金」と「自宅とアパートの管理」という信託契約を2つに分けました。
設計1は「自宅とアパート」を信託財産としており、第二受益者は長女と次女であるため、母他界後はアパートの家賃収入を長女と次女2人で受けることを、
設計2は母と長女の生活費として金銭を信託財産として信託し、母他界後は次女が信託金融資産を使って長女の生活費などの管理をすることを目的としています。
家族信託を活用することで、徐々に意思判断能力が失われる状態になっても、数年に亘って日常生活費の送金、不動産の管理や修繕、高齢者施設の費用の支払いなどの行為も信託契約で決めた目的に従って、次女の判断で財産を自由に処分、活用することができるようになります。また、もしも次女一人で長女の日常生活の管理まで行うことが負担となったときには、成年後見制度を使い専門家等を活用することで、信託財産は家族信託で受託者の次女が、それ以外の日常生活費など管理や身上監護は後見人が行うことで次女の負担を軽減しつつ、柔軟な財産管理を行うこともできます。
そして、母と長女が他界した後は、次女がすべての信託財産を残余財産として受け取ることになります。
このように、「家族信託」を活用することで、次女の心配も母の想いも解決することができました。
今回使った家族信託は「受益者連続型信託」というものです。この仕組みを活用することで、親なき後問題だけでなく、二次相続や三次相続についても様々な活用ができます。受益者連続型信託は長期の信託契約となるため、当初想定できなかったリスクが発生するおそれもあります。必ず、家族信託に精通した専門家に相談して、「信託監督人」などに就任してもらうなど、長年にわたってサポートしてもらうようにしましょう。
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