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家族信託の活用事例①~認知症対策~
2018年9月25日
①認知症対策
「家族信託」の相談事例の中で一番多いのが認知症対策です。高齢の親が所有している財産の管理や承継を認知症になる前に対策したいとの相談が多いです。これは、超高齢社会がますます進むに伴って、確実に認知症の方がさらに増えてくるため、今後日本全体の大きな課題であると考えます。
認知症に備えてどのような対策をするべきか、事例をもとに考えていきたいと思います。
事例1:高齢の親の実家を管理
現在、古い一軒家に一人暮らしをしている母(80歳)がいます。父は数年前に他界しており、母には、長男と長女がいます。その母は最近、足腰が悪くなってきており、将来は高齢者施設への入居を考えております。また財布や預金通帳がどこにあったか分からなくなったりするなど、母の物忘れが最近増えており、認知症が心配です。
●提案
母の年齢と現在の状態を考えると、数年後に認知症など、意思判断能力が失われる状態になる恐れがあり、その場合には、例えば施設に入居するための自宅の管理・処分などができなくなるリスクがあります。
現在、長女は嫁いで遠方に住んでいるが、長男は近くに住んでおり、母の様子を見に、週1,2回訪問していること、今後、母の介護をしていく長男に任せる意向が母にあることから、長男に母の財産を託す「家族信託」を提案しました。
家族信託を利用することで、徐々に意思判断能力が低下し、判断できない状態になっても、数年にわたって日常生活費の送金、自宅の管理や修繕、高齢者施設へ入所後の処分などの行為も信託契約で決めた目的に従い、長男の判断で母の財産を自由に処分、活用できるようになります。
信託スキーム設計
委託者(託す人) 母
受託者(託される人) 長男
受益者(利益を得る人) 母
信託財産 自宅、預貯金
終了事由 母の死亡
帰属権利者 母の法定相続人
★結果・・・・・円満な相続対策、特に「家族信託」は、家族全員の理解と協力が必要です。そのため、その仕組みと今後の母の介護のこと、生前対策のことを母、長男、長女を交えて説明し、家族会議を開き、しっかりと当事者全員の想いをヒヤリングした上で、今回の対策を実行することになります。
事例2:高齢アパートオーナーの資産管理
自宅とアパートを複数所有している父(87歳)がいます。子供は長男(60歳)と長女(56歳)の2名です。
父は自分でアパートの管理を行っていますが、先日急に倒れ、数日間入院するなど、体調や具合も悪くなってきました。その後は無事退院しましたが、物忘れが出始めており、認知症の症状が心配になってきました。今後認知症の程度が進んだ場合、アパートに入居希望者が出た場合や退去者がでた場合の契約手続きなどのアパート賃貸管理や修繕、相続の問題が心配です。
父は、自宅、アパート2棟(AアパートとBアパート)のほか、金融資産を所有しています。同居する長男に自宅とAアパートを、長女にはBアパートを相続させたいと考えています。
●何もしなかった場合
認知症などで父親の判断能力が喪失した場合には、アパートの賃貸管理や売却処分、大規模修繕、建替え等の相続対策ができなくなります。また、父親の相続発生後、遺言を作っていない場合には、相続開始後10か月以内に法定相続人間で誰が何を相続するか遺産分割協議をまとめる必要があります。そのため、資産の多い少ないに関わらず相続人がもめて「争族」になってしまうことがよくあります。
●成年後見制度を使った場合
父親に資産があるため、親族は成年後見人にはなれず、弁護士や司法書士、行政書士等の専門家が成年後見人になる可能性が高く、その場合、父親にとって意味のある合理的な理由のある支出しか認められなくなります。家族にとってメリットのある行為(例えば、将来の相続対策としてのアパートの建替えや大規模修繕、売却など財産の整理、処分行為)をすることができなくなります。もちろん、孫にお年玉も上げられなくなります。さらに、専門家に支払う報酬などのランニングコストもかかってきます。また、父親の相続発生後、遺言を作っていない場合には、相続開始後10か月以内に法定相続人間で誰が何を相続するか遺産分割協議をまとめる必要があります。
★家族信託を使った場合
長男が相続予定のAアパートについては長男を受託者、長女が相続予定のBアパートについては長女を受託者、そして利益(家賃など)を受け取る権利は父親とするために受益者は父親とする信託契約を2契約締結します。
信託スキーム設計1
委託者 父
受託者 長男
受益者 父
信託財産 自宅、Aアパート、現金
信託終了事由 父の死亡
帰属権利者 長男
信託スキーム設計2
委託者 父
受託者 長女
受益者 父
信託財産 Bアパート、現金
信託終了事由 父の死亡
帰属権利者 長女
●結果
委託者と受益者が父親であり、名義だけを受託者である長男、長女とする信託契約としているので、不動産取得税や贈与税、譲渡所得税などは発生しません。父親が元気なうちは、父親と長男、長女が共同でアパート管理を行い、将来、父親が判断能力を失う状態になった場合には、受託者である長男、長女がそれぞれのアパートの財産管理処分権限を持っていることから、入退去時の賃貸借契約のほか、大規模修繕や建替え、売却を行うことが可能になります。
また、信託契約書の中に、将来相続が起こった場合に、どの物件を誰に相続するのか残余財産の帰属先を定めておくことができます。そのため、別途遺言の作成や遺産分割協議をしなくても、物件を管理している長男、長女がそれぞれ信託契約者で定めた通りに財産を相続させることができ、生前に円満に、財産管理と遺産分割をまとめることができました。
このように、「家族信託」には、成年後見制度よりも柔軟な財産管理、遺言の機能による財産承継など、今までいくつも必要だった契約が一貫してまとめることが可能です。
自分の財産を「信頼できる家族」に託して、家族の「絆」を深めてみませんか??
家族信託などの財産管理や承継のご相談は「山本法務事務所」へ。お気軽にご連絡ください。
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